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東京都丸ごと民営化を許すな!第2回 保育の民営化反対の学習会報告

月刊『労働運動』34頁(0324号04/01)(2017/03/01)


東京都丸ごと民営化を許すな!労働組合の闘いで小池打倒へ! 第2回
保育の民営化反対の学習会報告

東京労組交流センター女性部学習会

小池都政の「国家戦略特区」を使った「保育の民営化」に絶対反対で闘おう!

 昨年11月26日に東京労組交流センター女性部が行った「保育園問題学習会」の報告を編集局の責任で抜粋した内容を掲載します。
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○樫村美恵子 保育園で用務員をしています。「子ども・子育て支援新制度」問題をやってきましたが、東京の戦略特区制度で保育園の民営化、商業化がさらに一段と強められているので、そのあたりのことを提起します。とりわけ小池都政との対決になると思います。

◆「国家戦略特区」で都の保育園の民営化・商業化が激化

 東京都の戦略特区で、都政改革本部メンバーの中心は上山信一、鈴木亘の二人です。この二人の言っていることを見れば、都がどんなひどいことをやろうとしているのか、わかると思います。
 鈴木亘が言っていることを読むと保育園をどうしようとしているかわかります。「保育士は給料が安い。給料の補助をするべきだ。事務員、調理師、幼稚園教諭は待機児童対策には関係ないので、補助から除外すべきだ」「認可保育園の保育料が安い。保育士給与が高いから待機児童が出る。莫大な公費負担を伴う保育園は次々つくれない」と言っています。お金が
かからない保育園をつくろうということだと思います。「認可保育園の公費投入を廃止し、バウチャー制度を」とも言っています。これは利用者に補助を出すというやり方です。
 国家戦略特区の活用で待機児童対策を以下出しています。
①「保育士資格割合の緩和」―新制度で具体的に始まっていますが、小規模保育園は5割でいいと。
②「0歳児を家庭で育て、1歳児から保育園利用」 ―0歳児は保育にすごいお金がかかるのです。1歳からの倍くらいお金がかかる。1歳児からの保育園にすれば、保育園の運営が安くて済むと言っています。1歳までは育休給付金を出して、家庭で育てればいいと言っています。それではみんな生活できません。
③「無認可保育に対するバウチャー」 ―これは利用者に補助金を出せばいいと言っています。
④「高所得者の保育料の引き上げ」―認可保育園に入る保護者は高所得者が多い、無認可に入れている保護者は給料が安い非正規が多いから、高所得者の保育料を上げればいいと言っています。
 上山信一は大阪市の橋下の顧問でしたが大阪でうまくいかず、今は小池都政の都政改革本部の総括顧問です。彼の『自治体改革の突破口』を読めば、ひどいとわかると思います。例えば「公営バスの運転士の給与は民間の2倍弱にもなる。『市民の足論』『バスは福祉』の名のもと、労組が赤字を正当化」などと言っています。保育園はお金がかかるから民営化すべきだという考えです。この人の思想は、『自治体改革の突破口』の最後に出ています。「問題は資本主義の制御である。必要なのは自立と節制だ。社長は数億か数十億の年収で我慢し、労働者は法外な賃上げ要求やサボタージュを要求しない。お互いを人間同士と尊重し、信じ合う。これが博愛主義である」。新自由主義が行き詰っている中で、これからは博愛主義が時代を救うなどと言っています。この世界観を読んだだけで、彼が保育で何をしようとしているのかがわかると思います。社長が数億か数十億で我慢しろと言っているのが信じられませんが、労働者は賃上げをするなと、これでは労働者は生活できないです。こういう人が都政改革本部の中心メンバーす。
 国家戦略特区で、保育園の部分は具体的に始まっています。
 中野区の場合は、保育所の規制緩和で、家庭的保育の調理員配置義務の撤廃、外部搬入などが出されています。保育ママさんの活用とか、保護者がお弁当を作っていましたが、給食を提供しなくてはいけなくなり、調理員配置義務の撤廃で、外部搬入がいいと言い出しました。中野区でも区立保育園で調理したものを提供することが、2017年2月から2園でやりたいと提案されました。
 居宅訪問型(ベビーシッター)活用の弾力化で、保育園では間に合わないので、弾力化を言っています。東京新聞にも出ていますが、「保育人材確保『都が主導的に』」ということで、「保育所の増設だけでは対応に限界があるとして、ベビーシッターの積極活用を促す声もあった」と言っています。ベビーシッターで死亡事故が起きていますが、その規制緩和を行おうとしています。
 各自治体の公立保育園の民設民営化の推進について、杉並区と中野区のことを提起します。
 中野区の場合、2016年10月初めに突如、区立保育園の5園立替で民設民営が発表されました。指定管理者制度で、宮ノ台、宮園保育園の運営はすでに民間委託されています。今は公設民営ですが、古い建物なので建て替えて民設民営にしようとしています。7園を民設民営にする非常に乱暴な案が出されました。今までと違って激しい形で中野区でも進んでいます。私のいる保育園も平成29年度までは公立の直営ですが、近くに仮設園舎を造る予定で用地の確保が決まりました。平成30年度から引っ越して、仮設園舎で民間の保育園の運営にする計画です。30年度は仮設園舎で運営して、その1年間に今の保育園を壊して民設民営の新園舎を建て、31年度から民設民営でスタートするというやり方です。こういうやり方で民設民営化するのは初めてです。
 杉並区も同じようなやり方で、阿佐ヶ谷北保育園や杉並保育園も民設民営です。老朽化した保育園を民間にしていく動きがあります。
 公立保育園は2000年以降減っています。2000年に全国で1万2707園あったのが2012年で3000か所減って、今はもっと減って、民間に切り替わっています。2004年に国の公立保育園に対する補助金がなくなったのです。運営の2分の1が国から出ていたのがなくなって、現在、区立保育園は全額を区の財政で賄わなくてはいけないようになっています。2000年、特に2004年以降、民営化に拍車をかけている状況の中で、新制度が始まり、さらに小池都政下の国家戦略特区の活用で激しい規制緩和が始まっています。
 保育の安全崩壊ですが、保育園での乳児の窒息事故やゼロ歳児を動けないように毛布で縛って保育するといったことが起きています。一部の保育園ではなく、民営化とはそういうものだと思います。民営で保育をするのは絶対無理がある。安全が崩壊して、労働者が本当に細切れの非正規労働になっていく。そういう無理なことをさらに進めようとしています。また、そうやって子どもの預け先を確保して、女性労働者を無権利の労働に駆り立てる、女性労働者を安く使うために、安全じゃなくても保育園をどんどん増設する動きです。本当に許せない保育政策だと思います。
 公立保育園の民営化は、中野区も全園民営化すると言っていますし、やはり保育園をはじめとして、公務員の解雇・出向・転籍がこれから具体的に問題になってくると思っています。これとどう闘うのかを考えなくてはいけないと思います。中野区の場合は、民営化になって保育士が全員4月からがらっと替わってしまう。自分の子どもがこれからどうなるのか不安を持っている保護者がたくさんいて、区の説明会でずいぶん言っています。その中で「区の公務員の保育士を出向させてもらえないか」と、子どもは今までの保育士にみてもらいたいという保護者の不安な声を逆手にとって、出向という攻撃も出てくるのではないかと思います。
 上山信一は、『自治体改革の突破口』という本の中で、「公務員を出向させればいい」と言っています。公立にも非正規労働者が半分近く働いていますが、その人たちの解雇問題も起きてくると思います。小池都政がやろうとしていることについて、待機児童童対策でどんな規制緩和をやろうとしているのか、特区政策がどういうものなのかをもっと知らせていかなくてはいけない、民営化反対を本当に言っていかなくてはいけないと思います。

◆組合員の闘いで区立保育園からの給食提供を打ち破る

○北島一恵 中野の保育園で調理の仕事をしています。小池知事は保育の実施主体は民間企業だと、保育園を民営化することを前提にして論議しています。国家戦略特区で、保育園を地下1階に設置できるように規制緩和するとまで言っています。建築基準法28条に学校や保育園の採光基準があります。床面積に対して一番厳しいのが保育園です。床面積の5分の1以上の窓が必要です。本来保育園は1階が望ましいが、2階3階に造る場合には2方向に2経路以上の避難路が必要となっています。それが地下で何でもありとなっているのです。
 保育の質と言われます。民間だから保育の質が下がるのではなくて、労働者の配置や処遇、仕事の仕方が全然違うのだと思います。保育園で火事や地震時のために避難訓練をします。0歳、1~2歳の子も避難し、0
~1歳はおんぶして避難しますが、それには人数が必要です。担任だけでなく私たちも行き、2歳以上の子は手を引きます。歩く場合は、階段の両側に手すりをつけなくてはなりません。保育園を全部金儲けにしたらとんでもないことになります。
 中野区は保育の民営化をどうするか。中野区のほとんどの窓口業務は民営化されています。区職労自体が民営化反対を掲げられない。保育の民営化に対して私たちは民営化反対だということを実際の運動としてどうつくるか苦心しています。まずは「民営化に反対だ」のビラは作りました。保護者に門前ビラでそのことを伝えました。保護者からものすごい反応が返ってきました。保育園が民営化されると、保育士の数も違ってきて、引き継ぎ過程で必ず混乱が起きる。子どもたちが不安になることが一杯起きてきます。一回目は保護者と民営化反対でいこうとなりました。2回目は、「田中区長に民営化をやめさせるのは非常にむずかしい。だから民営化される時に、できるだけ子どもの被害を少なくさせるために区の職員の労働組合は出向に応じてくれ」と言ってきました。私たちは「できません」と。出向しても、時間が過ぎたら私たちはいなくなるわけで水準は必ず低くなるからです。どんないい引き継ぎをしても、労働者の労働条件が改善されない限り、悪くなるのは当たり前です。私たちは10年間、それで苦しんできたと話しました。民営化に反対することをはっきりさせること、保育園で働く400人くらいの雇用問題も含めて、今後の課題になっています。
 国家戦略特区の具体的活用で、家庭的保育の調理義務の廃止というのがあります。国家戦略特区というよりも「子ども子育て新制度」で、平成32年までに事業者が自分のところで給食を作らなければならないとなりました。でも家庭で流しを新設して調理師を雇うなどできないわけで、区の保育所からと提案されました。しかし、これは撤回させました。新しいことを始めるのに労働組合と話をせず、課長が直接、2017年2月から試行する保育園に行って、調理師にこれをやりたいというやり方は絶対に認められないと、交渉で紛糾し決裂しました。調理師の緊急会議を開き、この問題をどうするか論議しました。再提案するということでしたが、昨日、課長が「2月からはできない、あなたたちにそういうふうに言われるくらいならこの事業はやらない」と答えました。
 どの区の保育士も本当に子どものことを考えて保育をしているから、民営化に反対しなかったら何をやってもダメなわけです。民営化には絶対反対で、公立保育所をつくれ、公立保育園をつぶすなという運動をどうつくっていくのかが大事です。最初は声は小さくても少ない人数であっても組合の中で闘っていくことが大事だと思います。

◆民営化反対を掲げて闘おう

○伊藤登美子 11・12韓国に行ってきました。民営化問題を国民的課題にしているとすごく感じました。保育園問題は、保育労働者と子どもの親たちの問題ではなくて、全社会的問題だとと思います。鉄道労組がストライキをやっている中で12日の闘争が行われました。「民営化とは何か」ということです。帝国主義が崩壊している中で、どういうスローガンを私たちは全労働者に保育問題も含めて発信していくのかを考えています。
 韓国で公共運輸連盟のストライキで副委員長が言ったのは、「競争は企業に利益になるだけで労働者には一つも利益はない。破壊していくだけだ。民営化は公共の私物化だ」と言いました。企業の私物化です。国家の予算を全部企業に流しているわけです。
 杉並区は保育園を作ることを投資としてやっている。税金を投資して返ってこない。公園を規制緩和して保育園を建てるのも、国有地、市有地、区有地をただ同然に民間にあげる。この仕組みを労働者の怒りとしてどう火をつけるのかです。国鉄分割・民営化がそうでした。国鉄を民営化し、人員も大幅に減らして、安全も崩壊しています。
 自治体労働者が民営化反対を貫く、それは自治体労働者の団結なくしてできないと思います。それなくしていい保育園をつくるというのでは絶対だめだなと思っています。
 私は教育労働者でしたが、教師の多忙化も大きな問題です。保育労働者も多忙化だと思います。現場労働者が全労働者のために闘うスローガンをつくっていくこと、民営化反対が大事だと思います。
 (※介護問題の提起や質疑討論も活発にありましたが、紙面の都合で割愛しました)