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国鉄闘争全国運動本の紹介

月刊『労働運動』34頁(0329号03/01)(2017/08/01)


国鉄闘争全国運動本の紹介
『国鉄分割・民営化と闘って30年 労働運動の変革をめざして』を発刊


― 動労千葉と国鉄闘争30年の軌跡と労働運動の変革の展望を示す ―

 このたび国鉄闘争全国運動から『国鉄分割・民営化と闘って30年 労働運動の変革をめざして』を発刊しました。本書は、2015年6月の最高裁決定を受けて、国鉄闘争(全国運動)の総括と今後の展望を明らかにするために準備したものですが、当初の出版プランを超えて討議に2年を要し、結果的に国鉄分割・民営化から30年のタイミングでの発刊となりました。
 何よりも本当に多くの人びとの支援・連帯に支えられてこの書籍を発刊することができたことに心から感謝を申し上げます。
 本書の最大テーマでもある国鉄分割・民営化、そして、これをめぐる闘いについて、さまざまな当事者がさまざまな書籍を出版してきました。その中で、30年の原則的な闘いを貫き通し、今後の闘いを形成していく立場から、単に過去を総括するのみならず、今後の国鉄闘争の展望を明らかにするものとして発刊された本書には歴史的意義が少なからずあると自負しています。
 また本書は、動労千葉を中心に国鉄闘争を叙述する構成となっていますが、1972年の船橋事故以来、三里塚ジェット燃料輸送、動労本部からの分離・独立、国鉄分割・民営化、鉄道業務外注化......既成の労働運動の〝常識〟からはおよそ「不可能」「非現実的」と言われた困難な課題に対して、動労千葉は、組合員の団結と「労働者階級は必ず立ち上がる」という深い信念・信頼にのみ依拠して立ち向かって30年の闘いを継続してきたことが描かれています。
 動労千葉は反合理化・運転保安闘争を基軸的路線としながら、現場の組合員一人ひとりと向き合って議論し、小さな「勝利」を積み重ね、団結して闘うことに対する現場組合員の確信と信頼を形成することで団結を強化し、あらゆる困難に立ち向かってきました。そして現在進行形の闘いとしてJR東日本の外注化―水平分業・転籍の攻撃に立ち向かっています。
 タイトルの「国鉄分割・民営化と闘って30年」はすんなり決まりましたが、「労働運動の変革をめざして」は検討会議で最後まで悩みました。やや月並みな印象もありますが、労働運動の変革はすでに始まっている、その可能性は十分にあるのだ、という気持ちも込めて、執筆者の気持ちを汲んだ表題ではないかと思います。
 ぜひ本書を国鉄闘争を支持し、支援・連帯してきた全国の人びとに届けたい、読んで欲しいと考えています。国鉄闘争全国運動の会員の皆様からの感想や批評もお願いしたい。以下、各章を簡単に紹介します。

動労千葉の出発点

 第1章(伊藤晃)は、動労千葉の出発点は反合理化・運転保安闘争であり、1972年の船橋事故闘争が、動労千葉の運動の起点となったと記述しています。
 3節では、動労千葉の運転保安闘争の思想に検討を加え、動労千葉の反合・運転保安闘争路線が〈労働組合は合理化に対して闘うことができる〉ことを示し、戦後反合理化闘争に対する根底的批判となったことを明らかにしている。
 それは三里塚ジェット燃料輸送阻止闘争や動労本部から分離・独立闘争を通して確立され、やがて国鉄分割・民営化反対闘争として〝実証〟される。
 布施宇一・動労千葉顧問からも「動労千葉の出発点を反合・運転保安闘争であるとした第1章のタイトルは、私の考えにぴったりとくる」とあとがきを寄せていただいた。1章は本書を貫く〝思想〟でもある。全体で7章ありボリュームもあるので興味のある章から読み進めることもあると思うが、ぜひ1章は読んでほしい。

動労千葉の決断

 第2章(藤村一行)は、国鉄分割・民営化阻止闘争を書いた。
 中野洋・前委員長らの著書『俺たちは鉄路に生きる2』などもあるが、あらためて30年を闘い抜いた時点から全体像を明らかにすべく準備したものだ。
 労働運動全体がどうなるのかの緊迫した情勢の中で、動労千葉が2波のストライキ闘争を決断していくプロセスを描くことに留意した。なぜ動労千葉指導部は決断できたのか。〈この闘いをやり抜くことで団結を守りぬくことができる〉と確信をもつことができた過程を読んで欲しい。
 当時を動労千葉と共に闘った読者からは緊迫感を思いだしたとの感想をいただいた。当時を知らない若い読者にもぜひ読んで欲しい。

国鉄闘争の底力

 第3章(井町哲生)は、国鉄1047名解雇撤回闘争の出発とその意義を明らかにし、国家権力が四半世紀にわたり、ものすごい精力を費やしてこの闘いを解体しようとしたこと、そしてこれに抗してきた国鉄闘争の底力を明らかにしている。
 2010年4・9政治和解に至る1047連絡会や4者・4団体をめぐる攻防など、この過程の全体を論述した資料は少ない。また国鉄1047名解雇撤回闘争を支援してきた全国の人びとに必ずしも明らかになっていない内容もあるかと思う。その意味でも興味深い章である。

外注化阻止闘争

 第4章(片峯潤一)は、17年間に及ぶ動労千葉の外注化阻止闘争を取り上げた。
 反合理化・運転保安闘争路線で40年以上の団結を維持し闘争を継続してきた動労千葉が、現在進行形でそれを貫く闘いが外注化阻止闘争だ。4章は、合理化という労働運動にとって古くて新しい、そして本質的課題が、新自由主義において外注化攻撃として表れていることを明らかにし、動労千葉がこれに真正面から闘いを挑み、17年間に渡り対峙し続けていることを論述している。
 第1章と併せて読むことを勧めたい。新自由主義時代の労働運動の展望を示す章だ。

暴かれた真実

 第5章(白井徹哉)は、国鉄闘争全国運動の意義とその闘いの成果、今後の展望を書いた。
 本章の中心は「暴かれた真実」。国鉄労働者20万人首切りの大陰謀が誰の手によってどのように遂行されたのかを書いている。
 JR設立委員長の斎藤や井手・葛西らが共謀して、国鉄分割・民営化に反対する動労千葉や国労組合員の名前を削除したことが明らかになり、最高裁判所をして不当労働行為として認めさせたのである。解雇撤回・JR採用へ向かって闘いはこれからだ。
 2010年4・9政治和解に抗して国鉄闘争全国運動と動労千葉が闘いを継続したことによる、大きな成果である。暴かれた真実は、その内容の衝撃に比して、残念ながらいまだ社会的に明らかになっているとは言いがたい。本章の内容をぜひ広げたい。

国鉄闘争と国際連帯

 第6章(金元重・山本弘行)は、国鉄闘争が切り開いた国際連帯を記述した。
 動労千葉の国鉄分割・民営化反対闘争が、当事者の予想を超えて国際連帯を生み出した。民営化との闘いは、新自由主義における労働組合の試金石なのだ。
 韓国の民主労総や鉄道労組、米国のILWUやUTLA、英・独・ブラジル・トルコ......新自由主義との闘いは、新たな労働運動の胎動をもたらし、階級的な伝統を再生・継承させ、何より、民営化との闘いこそが国際連帯を生み出す起動力になることを示した。
 新自由主義は労働者の政党や労働組合に対する苛烈な攻撃をもたらすものだが、同時に、労働運動の国際連帯への渇望を生み出す。しかも儀礼的な連帯ではなく、ランク&ファイルの新たな国際連帯のスタイルをつくりだしたのである。これは新自由主義の最も積極的な要素だと思う。この章から読み始めるのもおすすめだ。

労働運動の変革

 第7章(田中康宏)は、1~6章と重なる内容でもあるが、動労千葉の闘いの歴史が、これまでの労働運動の経験において前例のない運動と団結をつくってきたことを、動労千葉委員長という実践的立場からとらえ返して論述している。
 動労千葉の経験の中に、様々な産別・職場における労働運動の変革に役立つものがあるならばと執筆を引き受けてもらった。力作であり、ぜひ読んでほしい。
 7章の冒頭に書かれた「労働者を徹底的に信頼して、職場で起きること、社会で起きることの意味を真正面から組合員に伝え、自らの闘いの課題にしていかなければならない」――この努力がいま必要だと思う。

※ 2020年改憲攻撃をめぐり安倍政権は連合を激しく揺さぶっている。東京や大阪をはじめ自治体丸ごと民営化攻撃はこれからだ。労働運動は激しい流動化と活性化の情勢を迎える。英米や韓国などで顕在化した労働者階級の変化は日本でも始まっている。
 「必ず労働者階級は立ち上がる」「労働者は団結して闘うことができる」――情勢に負けずに、この精神を失わずに闘うことが大切だ。国鉄闘争は労働運動の変革と再生の導きの糸であり、可能性を示している。本書をぜひ活用してほしい。(定価1800円+税/発売・星雲社)※国鉄闘争全国運動でも取り扱います。
 (国鉄闘争全国運動会報85号から転載)

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第1章 動労千葉の出発点――反合理化・運転保安闘争 伊藤 晃
第2章 80 年代国鉄分割・民営化阻止闘争 藤村一行
第3章 1047名解雇撤回闘争と動労千葉 井町哲生
第4章 外注化に立ちはだかる動労千葉 片峯潤一
第5章 国鉄闘争の火を消すな! 国鉄闘争の新たな全国運動 白井徹哉
第6章 国際連帯闘争――戦争と民営化反対を掲げて 金 元重・山本弘行
第7章 労働運動の変革をめざして 田中康宏