月刊労働運動-Home> 運営活動 >

衆院選を闘い「改憲阻止!1万人大行進」へ/交流センター

月刊『労働運動』34頁(0331号02/01)(2017/10/01)


安倍打倒の衆院選を闘い「改憲阻止!1万人大行進」へ


飯田 英貴(全国労組交流センター事務局長)

改憲のための総選挙と闘う

 9月17日、マスコミが一斉に衆院解散・総選挙の動きを報じた。安倍は9月28日臨時国会冒頭での解散、10月10日公示―22日投開票を狙っている。
 今回の解散・総選挙は一点、改憲と朝鮮侵略戦争参戦に向けたものだ。自民党幹事長代行・萩生田は「この時期に解散するのであれば、北朝鮮の脅威とどう向き合うかも含めて国民に説明する必要がある」「戦後初めて安全保障上の危機が迫っている中、安全保障法制が実際にどう機能するかも含めて、国民の理解を得ることが必要だ」と述べ、総選挙が朝鮮半島に対する戦争への本格的参戦のためであることを強調した。
 安倍は、自らが5月3日に提起した「憲法9条に自衛隊を書き込む」案を自民党改憲案として提示し、来年の通常国会で審議を進め、国民投票を通して2020年新憲法施行を何としても実現しようとしている。
 9月12日に行われた自民党憲法改正推進本部の全体会合では、安倍の改憲案支持が多数を占め、「千載一遇のチャンス」「北朝鮮情勢などをふまえてむしろこの時しかない」などという声が飛び交うなど、自民党は危機の突破を改憲にかけて一気に突き進み始めた。

改憲は朝鮮侵略戦争のため

 安倍の改憲は戦争だ。このかん安倍は誰よりも米トランプ大統領と緊密に連絡を取りながら、北朝鮮脅威を意図的にあおり、朝鮮半島に対する戦争を準備してきた。国連安全保障理事会が9月11日に採択した新たな北朝鮮への制裁決議は、初めて北朝鮮への石油輸出制限に切り込んだ。アメリカは決議の採択日を宣言し、中国、ロシア、韓国に決断を迫るなど前例のない手法で交渉に臨み、1週間というスピード採決に持ち込んだが、これを支え、推進したのはむしろ日本政府であった。
 米日が進めた当初の決議案は、石油の全面禁輸や国外の北朝鮮労働者の強制送還、貨物船への臨検など即全面戦争につながる強烈な内容であったが、いったん戦争になればどうなるか。1994年5月、米がクリントン政権時に行った対北朝鮮戦争シュミレーションによれば「開戦90日間で5万2千人の米軍が被害を受け、韓国軍は49万人の死者を出す、南北間の隣接性と大都市戦争の特殊性からして100万人の死者が出る」と予測した。なおかつアメリカは北朝鮮に対する先制核攻撃、政権の転覆を目論んでいる。トランプと安倍がやろうとしている戦争は、東アジア、全世界を巻き込んだ史上最悪の核戦争だ。
 戦争の危機があおられ、これまで影をひそめていたあらゆる反動が噴き出している。防衛省は2018年度予算の概算要求で、過去最大となる5兆2551億円を計上した。「敵基地攻撃能力」の保有が議論され、1発1億円もの巡航ミサイルトマホークの購入まで検討されるなど、安倍はこの機に大軍拡へと向かっている。また、元防衛大臣の石破は9月6日テレビ朝日の番組で「米国の核の傘で守ってもらうといいながら、日本国内には核兵器は置きませんというのは本当に正しい議論か」「持たず、作らず、持ち込ませず、議論もせずでどうやって責任をとるのか」と核配備を公然と主張した。
 さらに、防衛省が軍事技術に応用可能な基礎研究を委託し、資金を提供する「安全保障技術研究推進制度」の17年度の採択結果が公表されたが、そこにはIHIや三菱重工業、富士通、日立製作所、東芝マテリアル、パナソニックの日本を代表する企業が名を連ねている。国際競争に敗北し衰退しつつある日本の製造業が、軍需産業に生き残りをかけるのはかつての戦争と同じではないか。戦争の動機は常に資本主義の危機にある。

労働運動圧殺しクーデター狙う

 改憲は「戒厳令」下で反対の声を禁圧し、クーデターとしてやる以外にない。戦後最大の改憲攻撃は国鉄分割・民営化であった。中曽根元首相は、「国労をつぶし、総評・社会党をつぶすことで立派な憲法を安置する」と言い、民営化の目的が改憲のための労働組合破壊であったと語っている。安倍も同じだ。安倍は改憲のために労働運動の解体に全力を挙げている。
 第一次安倍政権では国民投票法を成立させ、「公務員等及び教育者の地位利用による国民投票運動の禁止」「投票日前の国民投票運動のための広告放送の制限」を定めた。第二次安倍政権下で共謀罪の成立を急いだのも改憲反対の労働運動を事前に圧殺するためだ。
 今年7月、安倍と連合事務局長・逢見(UAゼンセン元会長)が密会を繰り返していたことが明らかとなった。安倍が狙ったのは連合の改憲勢力化だ。
 安倍の盟友である櫻井よしこが2014年11月3日付の産経新聞に「民間労組、官公労と決別を」と題する文章を寄稿した。櫻井は、UAゼンセンのように「企業防衛、愛国主義、憲法改正、原発推進」を「労働運動の理念とせよ」と主張する。現代版の産業報国会の思想そのものだ。
さらに櫻井は「地方各地で反基地、憲法改正反対運動が展開され、地元の自治労や日教組が前面に立って旗を振る」と自治労、日教組を攻撃し、「UAゼンセン以下民間労組は官公労と決別し、連合を分裂させよ」と主張した。安倍はUAゼンセンを会長に据え、連合を乗っ取ろうとしたのだ。

労働運動の変革が改憲阻止の力

 しかし、安倍による連合の産業報国会化、改憲推進勢力化は一旦破たんに追い込まれた。破たんに追い込んだのは現場労働者の怒りであり闘いだ。「二度と戦争は繰り返させない」という労働者の闘いこそが改憲を阻止する力だ。
 いまひとつ、安倍が狙う「働き方改革関連法」案の一括採択を全力を挙げて阻止しよう。
 この攻撃は「戦後労働法制の解体」などという言葉では到底表現できない。企業の「生産性向上」のために労働者を働かせることへの大転換であり、およそ人が働いて生きていくこと、生活すること、社会を形成することを根底から破壊する。こうした全面的法改悪を「連合の修正案丸飲み」という形であらかじめ反対の声を封じる形で強行しようというのだ。しかし、実際はこの「修正案」に反対の声が上がったのであって、連合の崩壊的危機は何一つ解決していない。闘いはこれからだ。
 労働運動を甦らせること―改憲と戦争を止める力もここにある。人間の歴史は決して外的必然ではなく、人間自身の選択と行動によってのみつくられるものであるならば、我々の改憲阻止決戦はまさに膨大な「普通の労働者」が自らの決断と団結した行動によってのみ、新しい社会と歴史を作り出す闘いに立ち上がっていく、人間解放をめざした壮大な闘いである。労働者の生きていけない現実と改憲・戦争の問題は、必ず韓国のようなゼネスト情勢を日本でもつくり出す。その闘いの一歩として今年の11・5労働者集会を「改憲阻止!1万人大行進」として勝ち取ろう。