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11月労働者集会・改憲阻止1万人行動の報告 日韓鉄道労働者交流会

月刊『労働運動』34頁(0333号02/02)(2017/12/01)


11月労働者集会・改憲阻止1万人行動の報告 日韓鉄道労働者交流会


※日韓鉄道労働者交流会

巨大な変革期にある韓国での鉄道労組の闘いに学び、連帯して闘おう!

 11月4日千葉市内で、日韓鉄道労働者交流会が行われました。
 韓国からは鉄道労組ソウル本部の組合員、日本からは動労千葉、動労水戸、動労東京、動労総連合・九州の組合員が参加しました。鉄道労組を先頭にしたゼネストとロウソク革命でパククネ政権を打倒した巨大な変革期の闘いと課題、日本の鉄道労働者の課題が明らかになった意義深い交流会になりました。

【参加者】(敬称略)

パクソンス(全国鉄道労組ソウル地方本部本部長)
パクチョンテ(全国鉄道労組ソウル地方本部調査局長)
イスンホ(ソウル地下鉄労組チュンムロ分会長)
キムテナム(ソウル地下鉄労組駅務支部対外協力部長)
田中康宏(動労千葉委員長)
川崎昌浩(動労千葉書記長)
関 道利(動労千葉副委員長)
中村 仁(動労千葉執行委員)
石井真一(動労水戸委員長)
辻川慎一(動労水戸副委員長)
吉野元久(動労東京委員長)
羽廣 憲(動労総連合・九州委員長)
動労千葉を支援する会3人、通訳2人、他

●司会 (川崎昌浩)
 韓国・日本の鉄道労働者の交流会を開始したいと思います。
 韓国における鉄道労働者の民営化阻止闘争が大きく闘われています。詳細は鉄道労組から紹介していただきたい。
 日本では今、JRで第3の分割・民営化と言われる攻撃がかかっています。日本で行われた攻撃が韓国で続いて行われるという状況があります。われわれとしては韓国が闘って勝利してきた地平をいかに引き継ぐのか、日本での闘いとの意見交換をして、その実践を学び取っていきたいと思います。
 各人の自己紹介をしてもらい、韓国の鉄道労組、地下鉄労組のみなさんから現状をお話ししていただきたいと思います。

(各自、自己紹介)

●川崎 韓国から現状報告をお願いします。

※韓国の鉄道労組の現状

●パクソンス 鉄道労組は、昨年72日間のストライキを打ち抜きました。今年ムンジェイン政権が誕生し、以前のイミョンバク、パククネ政権と比べて比較的安定した状況にあります。
 ストライキが終了し、ロウソク闘争を通してムンジェイン政権が誕生した中で、現在、積弊清算という闘いを進めています。ムンジェイン政権が登場して100日以上経っていますが、積弊清算という意味ではまだ遅れた状況にあります。今、鉄道労組では賃金打開交渉を進めています。鉄道の管理者は、イミョンバク、パククネ政権時代の人事のままなので、政府の下僕の存在なので、積弊清算が進んでいない状況です。
 5月に支部長たちを含めた社長退陣要求で積弊清算の闘いがあり、鉄道公社の社長は自ら辞表を出して辞めた状況があります。ムンジェイン政権下で社長を指名することになっていますが、まだ指名していません。
 昨年ストライキをやりましたが、その原因となった成果年俸制についてムンジェイン政権は廃止すると言っています。しかし、成果年俸制の導入は理事会で決定し導入されました。ですから労使間で協議をして、理事会で最終的に決定する手続きが残っています。管理者たちは、パククネ政権時代になった人たちなので、成果年俸制を廃止する手続きには至っていないということです。
 鉄道の解雇者ですが、民営化反対闘争を闘って解雇された労働者が現在98人います。ムンジェインが大統領候補時代に、鉄道の間違った政策で解雇された労働者の復職を約束したことがあります。今年の年末までに解雇撤回・復職をかちとるために今、闘争の最中です。
 鉄道の管轄は、国土海洋部になっていますが、2013年にスソ発KTX(韓国高速鉄道)民営化反対闘争でストライキをやりました。その時に民営化反対対策協議会があり、キムヒョンミという人がいて、その人が今の国土海洋部長官になった。キムヒョンミ長官も解雇者の復職を約束しました。鉄道の解雇者98人の復職に対しては年末までに復職できるという展望を持っています。
 長い間闘ってきたKTXの乗務員の問題について、次にお話ししたいと思います。
 KTXの女性乗務員についても、ムンジェインが候補の時に復職を約束したことがあります。KTXの女性乗務員の問題は、一般的な解雇撤回もありますが、女性差別的な問題も浮き彫りになっているので、社会市民団体との連帯も広がっています。現在、全国で闘っている40団体が対策委員会を作っています。その下で、KTXの女性乗務員問題について論議している状態です。
 KTXの問題を解決するためには二つの問題があります。
 一つは、KTXの給料の問題は大きな問題になっています。KTXの乗務員問題は裁判で争っていて、一審、二審は勝訴して、最後に最高裁でひっくり返りました。2億ウォンほどあります(すでに払われた未払い賃金の額で、その返還の問題がある)。その闘争の中で、昨年、闘争過程でKTXの中で自殺する事態も起きています。この問題について、宗教関係の指導者たちが、鉄道公社と協議しています。鉄道公社の現在の経営陣たちも非常に圧力を受けていると思います。2億ウォンのお金について、70%を公社が負担し、30%を女性乗務員が負担することを鉄道公社が提示しています。これを労働組合としては肯定的に受け止めています。ムンジェイン政権下で新しい主張が示されて、KTX問題も解決するのではないかと思います。
 もう一つは、解雇者の復職問題です。現在、ムン・ジェイン政権下で、鉄道の内部で解雇者を復帰させる動きがなされています。今、鉄道内で、非正規職の正規職への転換が論議されています。その過程でKTX問題も解決できると思っています。
 次に非正規職の正規職化問題について提起したいと思います。「労働者が生きられる社会」と言って「非正規職の正規職転換」を掲げて、ムンジェインは登場したわけです。非正規職の正規職転換は、公共機関の中から始めていくと言い、大統領府(青瓦台)が公共機関に非正規職の正規職化の指示を出しています。鉄道公社の中でも交渉が行われている最中です。
 鉄道産業の非正規職の正規職化問題は、まず命と安全を守る職種であり、非正規職の対象者が9000人います。そのうち清掃に関わっている労働者が4000人、残り5000人は鉄道に従事しています。
 清掃労働者4000人を子会社に移すことが専門家委員会の中で言われています。理由は、鉄道労組の組合員に加入していないというのがあり、大部分が韓国労総に所属しています。
 非正規職の正規職化は、三つの分科にわかれて論議が進行しています。清掃、技術、運輸の分科です。清掃分科で、清掃労働者を子会社に移すという論議を行っている状況です。鉄道労組に加入している労働者は、技術分科、運輸分科に所属しています。KTXの女性乗務員も運輸分科に所属しています。鉄道労組としては、安全と命を守る、常時勤務の対象者を正規職へ転換せよという要求をしています。対象者は5000人です。今年の年末までに非正規職の正規職化は解決できるのではないかと思っています。
 スソ(駅)発の(子会社の)KTXの統合問題、構造調整について申し上げます。統合問題は、キムヒョンミ長官が優先的に検討しなくてはいけない問題という見解を出しています。実際にスソ発KTXは、今は高速会社という子会社になっていますが、その統合が年末までに執行されることになっています。売却問題についてどう解決していくのかという問題があるので、統合の執行が遅れている状況です。最近の状況では、遅れても来年6月までには統合すると言われています。
 次に上下分離について話します。上下分離方式を解決するためには、法律を変えなくてはいけない。現在、与党が少ないので、法律を変えるのが難しい状況にあります。与党が有利に進めることができれば、法改正して上下分離方式を解決できると思います。
 キムヒョンミ長官は就任してすぐに鉄道労組の委員長と対談しました。その時に労組からいろんな問題について提示しました。キムヒョンミ長官は「民主労総は韓国の労働運動の中でも、非常に強固な組織である。公共運輸労組の中でも鉄道労組は特に強固な組織である」と言いました。こういうことをキムヒョンミ長官が言うのは、二つの理由があります。一つは、鉄道労組のことを非常によく知っていると表明し、対話を通して解決しようという狙いがあるのではないか。二つは、よく知っているから、上下関係ではなくて、対等に話をしようという意図があると思います。
 鉄道労組としては、ムンジェイン政権に対して憂慮している点もあります。実際、ノムヒョン政権の時に、ムンジェインは大統領府(青瓦台)で首席秘書官をしていました。その時代に、ノムヒョン政権が鉄道政策についてどう考えているかは、ムンジェインは傍らにいたので、非常によく知っていると思います。当時、民営化反対で鉄道労組がストライキをやったことは、ムンジェインもよく知っている。その時に解雇された労働者が45人いますが、まだ復帰できていない状況です。鉄道労組が心配しているのは、ムンジェイン政権がノムヒョン時代と同じように、変わるのではないかということです。ですから労組と政府が約束したことを守らせると。スソ発の(子会社の)KTXとの統合問題についてもムンジェイン政権に対しては構えていかなくてはいけないと思います。以上で、鉄道労組からの報告を終わります。

●キムテナム ソウル地下鉄のことについて報告をします。ソウル地下鉄には八つの路線があります。1~4号線までは、ソウルメトロが運営しています。5~8号線は、都市鉄道が運営しています。イミョンバクの時代に、ソウル地下鉄を民営化しようと狙っていたのですが、労組として闘いぬいて、今年5月に1~8号線まで統合する過程で、ソウル交通公社ができたのです。ソウルメトロが9000人、都市メトロが6000人、合わせて1万5000人の人が所属するソウル交通公社ができました。労組としては、八つの統合については、民営化を阻止する契機になるのではないかということで、肯定的に受け止めたのです。
 今後の問題として、会社としては一つになったのですが、労組としては三つあります。三つの労組をどう統合していくのかという問題が残されています。労組として注意しなくていけないことは、労組が一つになるのはそれに越したことはありませんが、民主労総として、民主労総を守っていく目標がなければならないと思います。ソウル地下鉄としては、韓国の様々の事業所、あるいは国際的な事業場を訪問し、状況を見ながらこれからも闘っていきたいと思っています。

※質疑応答

●川崎 質疑応答をしたいと思います。

●パクソンス 先程の報告の上で付け加えたい事があります。
 KTX闘争のことで、7対3という話が出ました。給与の問題に関して一審、二審で勝ったので未払い給与を受け取った。しかし、最高裁で負けたので、利子(25%)も含めて2億ウォンを戻さなくてはいけない。その2億ウォンの負担をどうするのかをめぐって公社が7で、組合が3になるということです。一人が自殺したという話をしましたが、子どもが小さくて、最高裁で負けてお金を返さなくてはいけないとなり、負担に感じて自殺したということです。
 積弊清算についてですが、様々に積み重なった弊害を清算するということです。

●辻川  韓国では、正規と非正規の労働者は別々の組合ですか。

●パクソンス 鉄道労組は、(各支部や分会では)非正規職労働者の組合は別にあります。鉄道労組の本部、地方本部がありますが、支部や分会では、非正規労働者は別の組合です。

●パクチョンテ 鉄道労組の規約としては、鉄道労働者であれば誰でも加入できるとなっています。

●辻川 一つの組合にするのはむずかしいのですか。

●パクソンス 非正規労働者であれ、正規職労働者であれ、その支部や分会に属している。非正規労組として独立してあるわけではなく、各支部の組合に、正規職も非正規職も組合員がいるのです。そのところで自分たちの職場の問題を共有しながら鉄道労組の中央方針の下で闘っている。

●パクチョンテ 正規職と比べて非正規職労働者は労働条件は悪い。そういう下で、その問題をどう解決していくのか論議しながら、労組として闘っているところです。

●キムテナム 非正規の正規職化の問題が出たので、別の組合ですが、キア自動車の組合で、代議員大会で労組から非正規職労働者を排除するということが起こりました。鉄道労組のように、正規職も非正規職も労組に加入してやるということではなくて、キア自動車のように正規職と非正規職を区別するという事態も起こっています。
 参考のために、正規職と非正規職の差別という問題に関して、自分たちもかなり取り組んでいます。例えば組合員が亡くなった時のために、組合員から積立金を集めていますが、その時には、3000ウォンと1000ウォンという違いがありますが、亡くなった時に組合から出す金額は同じです。

●田中 私たちも正規職と非正規職の労働者が団結して進むということが、口で言うのは簡単だけれど実際にやるのはどれほど大変なのかを経験しながら、でも団結しなくてはいけないと思って進んできました。ここに参加している仲間の中でも、動労千葉の北村君は非正規職で清掃業務をしていてJRの子会社です。動労東京の佐藤さんはJRの孫会社です。正規の3分の1くらいの賃金です。それが団結する道というのは、とにかく正規の労働者が非正規の労働者のためにストライキをやったりということを繰り返し繰り返しやる中で、信頼をつくるしかないというのが、この間の私たちの外注化阻止闘争の経験だったのです。これは永遠の課題ですよね。

●パクチョンテ 正規職から解雇されれば、改めて非正規職になるということで、やはり正規職が非正規職のために闘いをやるということは、同じ闘いだと思います。

●パクソンス 質問があります。動労東京のストライキ宣言をプリントでもらいました。動労東京の全員がストライキをやっているのか、それとも清掃労働者がやっているのですか。

●吉野 清掃労働者がやっています。

●パクソンス ストライキの過程はどうなっているのですか。手続きは必要ですか。

●吉野 手続きはストライキの通告だけで可能です。理由は、運転に直接影響がない作業は委託されているからです。JRから委託されている会社では、労働関係調整法上の10日前の予告義務がないのです。

●田中 韓国と違って日本の場合には、ストライキを行う時の手続きは基本的には全く必要ないのです。そのへんは、日本の労働法は基本的には自由だというのが前提にあります。韓国のように必須維持業務というのも全くないのです。
 規制があるのは、「公共の利益に関わる部門をストライキに入れる時には10日前に事前に通告をしなさい」というのがあるだけです。清掃部門だと、今日通告して今日ストライキに入れるという自由があるのです。

●パクチョンテ 組合員に対してどうするのですか。投票するというのはないのですか。

●吉野 定期大会の時に、スト権の1票投票が行われます。いつストライキに入るか、どういう課題でストライキに入るかは、執行委員会と職場集会で決めます。

●パクソンス 対政府や対JRの場合は通告するということだけれども、組合内部では投票するとか、会議で決めるとかという手続きをするわけですね。

●吉野 そうです。

●パクソンス 勝利を祈っています。(一同笑い、拍手)

●田中 まだ闘いは途中ですが、一人の仲間が非正規から正規に転換したのです。賃上げも4万ウォン勝ち取っています。

●パクソンス もう一つ質問ですが、日本では無労働、無賃金というのはあるのですか。

●田中 あります。ノーワーク、ノーペイです。

●パクチョンテ 韓国では、子会社になっているKTXは、SR株式会社となり、高速鉄道と言います。統合問題と上下分離問題についてですが、統合すれば雇用の安定とか、これまでの問題を解決することができるわけです。
 今、JR東日本で第3の分割・民営化と言われている、子会社化とか、非正規労働者を拡大して正規労働者を減らしていくという政策をやっている。その話を聞いて、非常に恐ろしいという感じを受けました。日本の現状を見ると、韓国にそのまま引き継がれるということがある。構造調整にしても、分割・民営化にしてもそうでした。そういうことがあるので恐ろしいという感じを受けました。
 今まで子会社を作って民営化、外注化攻撃がありましたが、韓国では政権が代わって、今そういう攻撃はありませんが、一旦政権が代わるとそういう余地があるので、非常に恐ろしいと思います。

●田中 今、JRがやろうとしていることは、JR本体は全く鉄道事業を行わない、単なる持ち株会社にしようとしています。こうした攻撃が2000年くらいから始まっていて、数百という会社に鉄道業務をバラバラにして外注化する過程にあります。この間、外注化されたのは、駅、保線、電力、信号通信、検修、構内運転、こうした部門が全部別々の会社に外注化されています。

●パクソンス 韓国でも2009年に七つの会社を作って分割・民営化を進めようとしたことがあります。文字通り本体は持ち株会社にして外注化する攻撃でした。

●パクチョンテ 韓国では、民営化・外注化に反対してこれからも闘いぬくと考えていますが、日本においても動労千葉とか、他の労組とも一体となって闘いぬければいいなと思っています。

●田中 東労組は、国鉄分割・民営化の時に、自分たちだけが生き残るために民営化賛成に回ってしまった労働組合で、職場でも激しい対立をしながら闘ってきたわけですが、僕らは東労組であろうとどこの労組であろうと現場の労働者はみんな怒っていますから、共に闘えると思っています。そういうことを追求し続けてきたんです。
 外注化問題も労働組合が「外注化を推進します」という協定を結んでしまうんですね。韓国では考えられないと思います。民営化の時も「民営化を推進します」という共同宣言をあげてしまったんです。僕ら自身もそういう状況を乗り越えて、現場の団結をもっと広げていくという努力をしなくてはいけないと思っていますので、その点で言うとまだまだ僕らの運動は広げ切れていないと思います。それをなんとか全力を尽くしてやりたいと思います。

●パクチョンテ 日本の鉄道労組の役員選挙は、直接選挙制ですか。

●田中 直接選挙制ではなく、代議員を選出して代議員が選ぶ制度です。

●パクソンス 代議員で選ぶということですが、民主労総は2002年から直接選挙制にしようと闘争をやりました。田中委員長が言われたように現場の怒りが高まっている中で、韓国鉄道労組も間接制から直接制に変えていかなくてはいけないと思います。

●田中 直接選挙制に変えていかなくてはいけないです。ダメな幹部はみんな落ちます。

●川崎 時間もないので、まとめていきたいと思います。

●田中 お話を伺って、ロウソク革命が生み出した闘いで、いろいろなものが変わっていく巨大な変革期にあるんだということを感じました。74日間ストライキをやりぬいた鉄道労組の力があれば、この大きな変革期を労働者の勝利にして、絶対前進していけるという、すごい熱いものを感じました。本当にありがとうございました。



●(全員で)団結ガンバロー! タンギョル! トゥジェン!