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労働組合運動の基礎知識 第41回残業代について

月刊『労働運動』34頁(0336号12/01)(2018/03/01)

労働組合運動の基礎知識 第41回
残業代について


 全国労働組合交流センター第25回総会時に開催された機関誌担当者会議において、このコーナーが「難しい」「分かりにくい」「残業代などについてわかりやすく解説を」という意見が出たと聞きます。そこで今回は残業代について書くことにしました。
 今国会で労働法制が全面的に改悪されようとしています。何としても阻止しなければなりません。「働き方改革」関連8法案として一括して法案を改悪しようとしていますが、その核心に8時間労働制の解体があります。今回からこの8時間労働制の問題を焦点にしてシリーズで書いてみます。
 裁量労働制や変形労働時間制、フレックスタイム制などは、すべて8時間労働制の解体のための攻撃です。そこで今回は「8時間労働制と残業代について」がテーマです。
 残業代というのは時間外手当とも言います。したがって時間内とは何かということがポイントになります。労働基準法は、1日8時間、週40時間を労働時間と定めています。これが法定労働時間であり、これ以上仕事をする場合は、36協定による時間外労働ということになります。36協定の話は、また後日します。
 ここで重要になるのが、就業規則の始業・終業時間です。これがきちんと固定していないと、時間外労働時間、残業代の割増手当も不確定になります。就業規則に8時始業、17時終業などと書かれていた場合、朝7時に出勤して18時まで仕事をすれば、早出残業1時間、残業時間1時間が時間外労働となり、この日は2時間の時間外労働をしたことになります。時間外労働には、割増賃金が支払われます。労働基準法37条1・4項に定められていて、この場合は2割5分増しの賃金が支払われます。割増賃金の基礎になる賃金は、月給制の場合は月の所定内賃金の時間賃金を割り出して決まります。家族手当、通勤手当、住宅手当などは、基本的に所定内賃金から除外されます。しかし、皆に一律についているような、住宅手当5000円とか、家族手当5000円とか、交通費補助5000円というような手当の場合は、所定内賃金に参入されます。バスの定期代のような具体的交通費は入りません。
 深夜労働とは、22時から5時の労働で、この時間帯に働くと深夜割増2割5分が支払われます。したがってこれを時間外で行う場合は時間外2割5分と深夜割増2割5分の5割増しの割増賃金を、会社は支払わねばなりません。
 休日労働は、3割5分増しです。したがって休日に時間外労働を行う場合は、6割増しの賃金を支払わねばなりません。
 労働基準法の一部が改定されて、大企業は2010年4月1日から月60時間を超える時間外労働について5割増し以上を支払う義務が課せられました。月60時間までは2割5分ですが、61時間目からは5割増しです。
 中小企業はその規定から除外される猶予期間がありました。しかし2015年に、除外規定を2019年4月1日から廃止することが決定されました。中小企業で働く労働者にも月60時間を超える時間外労働には割増賃金が支払われるということです。しかし、安倍政権は「働き方改革」8法案で2022年まで先送りする案を国会に提出しています。許しがたいことです。

小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)

小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)