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『国鉄分割・民営化と闘って30年』を読んで 労働組合を作るために必読

月刊『労働運動』34頁(0341号11/01)(2018/08/01)


『国鉄分割・民営化と闘って30年 労働運動の変革をめざして』を読んで
これから労働組合を作るために必読の本


綿貫 透(ちば合同労働組合)

 動労千葉の数多くの闘いの中で、①外注化阻止の闘い、②船橋事故闘争について、自分の仕事と絡めて考えてみた。
 職場の外注化・アウトソーシングと闘うのは、大変困難なことだと思う。外注化は、その職場の将来が見えなくなるし、攻撃の規模も期間も長いことが多い。
 自治体の現場でも民間委託はすごい勢いで進んでいるが、「今いる正規職員の身分は保証する」と言われ、正規職が闘えずに外注化が進んでしまう。実際には正規職が少なくなり、負担や矛盾は大きくなるのだが、「外注化や雇用の形態については経営の専権事項」という空気にすらなりかねない。
 そこからすれば、動労千葉の正規職の組合員が、「民営化は悪だ」「外注化は悪だ」という立場にたちきって、「これからの若者の将来を奪うな」と、外注化阻止を闘いにしていくのはすごいことだ。
 また、1972年船橋事故闘争からも学んだ。事故の直接の原因は、列車を進ませて衝突させてしまった運転士の〝ミス〟かもしれない。しかし、「事故は合理化の結果であり、会社の責任だ」と言い切って闘ったことが、圧倒的な職場の労働者の気持ちをとらえて、ついには当該の運転士を守り、施設の改善へとつながっていった。
 私は、自動車の運転を仕事にしているが、車を止めることには心理的な抵抗がある。自分の判断で車を止めてしまえば、上席から事情を聴取されるかもしれないし、止めずに安全に走らせることがプロの誇りという気持ちもある。そこからくるミスを、本人の責任にせずに合理化の問題に高めることができた。
 また年配の保守的な層が多い中で、青年だった中野洋さんが、必死になって議論をつくりだしたことが重要だと思う。
 日々の職場の矛盾を徹底的に討論して、ほふく前進する闘いの積み重ねが、その次の攻撃に対して闘える人を育ててきたのだと思う。
 また、1985年国鉄分割・民営化に反対するストライキの過程で、職場のたくさんのリーダーが解雇されていく経験をしたことも、「外注化を認めていいはずがない」という気持ちのベースになっている。
 本書は、「労働組合のつくり方」のような直接的なHOW TO本ではない。しかし、動労千葉というかつては右派の組合が、職場の団結を作ることで、個々の組合員が鍛えられ強くなっていく過程は、多くの示唆を与えてくれる。
 「労働者を軽んじる思想に取り込まれない限り、労働者は必ず勝てると確信している」(故・中野洋顧問)という言葉を胸にきざみ、闘う労働組合をともにつくろう。