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5・10常磐線竜田延伸絶対反対のストライキ

月刊『労働運動』34頁(0291号04/01)(2014/06/01)



5・10常磐線竜田延伸絶対反対のストライキ
 

 


石井 真一 (動労水戸執行委員長)

4月22日、JR水戸支社は、福島第一原発事故により運転中止となっていた広野駅から竜田駅まで、6月1日から運転再開(9往復)させる旨提案してきました。その前段で5月10日に試運転を行い、5月11日から30日まで乗務員訓練を行うというのです。
 動労水戸は5月7日、執行委員会を開催し、この攻撃は①楢葉町の住民を強制的に帰還させ、②補償金を打ち切り、③福島県民を被曝させ切り捨てる攻撃であることを共通の認識とし、この提案は絶対に許すことのできない攻撃であると全体で確認しました。そして試運転の5月10日に、いわき駅前と乗務を担当するいわき運輸区に登場し、抗議行動と闘いへの呼びかけを行うことを決めました。
 JR東日本は、安倍政権や東電と結託し、昨年8月から竜田駅までの延伸を準備し、本年3月にはいつでも電車が走れる状態にしていました。34億円かかったと言われている工事を住民にも秘密裏に行い、他方で只見線は地域住民の復旧させてほしいという要請に、乗車が見込めないと拒否しています。政治的に竜田延伸は進められているのです。
 動労水戸が行った水戸支社との団体交渉では、会社は非常事態の対応について避難計画やマニュアルもなく、訓練を行う計画もないことが明らかになりました。JRは原発事故以後、「社員は年間被ばく量20mSv」と勝手に設定しました。水戸支社は、社員の積算被曝量も全く管理しないで、「年間被ばく量」云々ということ自体許し難いデタラメです。これまで同様、今回も「気休め」に積算線量計を持たせるということです。
 帰町宣言を出すことえ踏まえ、楢葉町の町政懇談会が開催されました。町民からは「庭が1.7μSv/hあるのにそんなところに帰れない」「癌になったら誰が責任を取るのか」「早急に決めるべき問題ではない」など放射線被曝への怒りの声が上がりました。楢葉町の町長が帰町宣言を出せる状況ではないにもかかわらず、JRは楢葉住民を無視し、JR労働者の反対の声も無視して、竜田延伸に向け運転再開を強行しようとしているのです。
 動労水戸の竜田延伸中止の訴えを無視し、JR水戸支社は5月10日、試運転を強行しました。動労水戸はいわき駅前に登場し、竜田延伸反対の抗議行動を行いました。ビラは9割受け取られ、受け取った人と各所で討論が始まる事態が起きました。JR水戸支社が秘密裏に竜田延伸を狙って工事を完了し、政府・東電と一体で楢葉町民を無理やり帰還させようとしていることに怒りの声が巻き起こりました。駅前では「国会議員の家族は全員楢葉に住めばいい」「一言一句あなたの言うとおりだ」「除染なんかしてもすぐに戻ってしまう」という怒りの声があふれました。
 動労水戸には応援のメールが次々と届きました。小出裕章氏(京都大学原子炉実験所助教)からもメールが届きました。(別掲)
 動労水戸は孤立していない、それどころか福島県民の怒りを体現して闘っているという自信と確信に変わりました。
 会社による竜田延伸に関する説明会で、いわき運輸区内部でも「誰一人いない楢葉町に電車を走らせる意味があるのか」「第一原発で何か事故が起きたらどうするんだ。逆走するのか」「被曝するだけではないか」など、不安と怒りの声が上がっていました。その中で、動労水戸はいわき運輸区前に登場し、共に闘う呼びかけを行ったのです。動労水戸の青年、照沼君がマイクを握り「社員、そして乗客の安全を守れないような会社が行う施策に関して、我々は徹底して闘います。皆さんも声を上げましょう」と訴えました。
 乗務訓練が開始された5月16日、いわき―竜田間が強風で運転中止となりました。放射線量が高い地域、放射性物質が雨あられのように飛んでいる中を電車が走っているのです。内部被曝することが明らかな場所を乗客と乗務員をのせて電車を走らせる会社に対して、労働組合として闘うことは当たり前です。
 漫画「美味しんぼ」で、「被曝のために鼻血が出たとの表現は問題」と福島県や政府が言い出しました。しかし、福島県双葉町の井戸川克隆・前町長は9日の会見で「本当のことをしゃべっただけだ。県が慌てるのはおかしい」と言っています。福島県民の怒りが噴き出そうとしています。
 大熊町と双葉町に中間貯蔵施設を作る動き、ケネディー駐日大使の福島第一原発の訪問など、この時期に集中しているのも偶然ではないのです。動労水戸の闘いがすべての原発と原発事故の怒りに火をつけようとしています。5月31日は、6月1日竜田までの営業運転開始反対の集会を行います。楢葉町の帰町宣言が出ようと出まいと、JRの被曝強制と住民無視・労働者無視に怒りを叩きつけなければなりません。是非いわきに来てください。再稼働阻止も原発廃炉もこの闘いにかかっていると言っても過言ではないと思います。ともに闘いましょう。
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メール、いただきました。
 楢葉町に人々を帰らせること、もちろん反対です。
 動労水戸がストライキを含めた抗議闘争をしてくださるとのこと、ありがたく思います。
 私自身はその闘争に具体的に参加できませんので、あたかも有名人でもあるかのようにメッセージをお送りするのは気が引けます。
 でも、大切なことだと思いますので、私が考えていることを書きました。
 もし以下でよければ、お使い下さい。
 福島第一原子力発電所事故は、敷地内でも敷地外でも収束していません。敷地内では熔け落ちた炉心がどこにあるかも分からないまま多数の労働者、それも下請・孫請け労働者たちが被曝しながら放射能と戦いを続けています。敷地外では、10万を超える人々が故郷を追われ流浪化しています。
 そして、こんな事故を引き起こしたことに責任のある人々、東京電力の偉いさん、自民党の政治家、官僚、学者などは誰一人として責任をとっていません。
 その上、彼らは、1年間に1ミリシーベルト以上の被曝をしてはならないとの法令を反故にし、1年間に20ミリシーベルト以下の被曝で済む地には、一度逃げた人々も帰還するよう指示を出しました。
 1年間に20ミリシーベルトというのは私の様な放射線業務従事者だけに許される被曝の基準で、それを放射線感受性の高い子どもたちにも許すというのです。
 私はそんなことを許したくありませんし、まずは責任のある人たちを刑務所に入れるなり、きちんと責任を取らせるべきだと思います。
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 2014/5/7  小出 裕章