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ひめじょおん――女性部から民営化・外注化・非正規職化が学校給食の安全を崩壊させる

月刊『労働運動』34頁(0309号13/01)(2015/12/01)

ひめじょおん――女性部から
民営化・外注化・非正規職化が学校給食の安全を崩壊させる
清水 孝代(自治労 越谷市職)


 「9月18日、青森県黒石市の六郷小学校の給食室が、害虫駆除作業中に爆発。50歳代の給食調理員が死亡。児童2人を含む5人が重軽傷を負った」とマスコミで報じられた。同じ学校給食調理員として、職場が爆発するなど到底信じられず、次々と疑問がわいてきた。
 学校内にある給食調理室の害虫駆除を児童、教員がいない夏休み中ではなく、なぜ2学期になってから行ったのか。
 「ガスの臭いがする」「調理室のガスがつきにくい」という訴えが2学期初めからあったのに、なぜ放置されていたのか。
 事故の続報をインターネットで追っていくにつれ、その理由がわかった。この学校では86人の児童の給食を作る栄養士1人、給食調理員2人の全員が非正規の臨時職員だったのだ。
 学校給食の現場では、夏休みなどの長期休業期間中は、機械器具類のメンテナンスや洗浄消毒に必要な人員(主に正規職員)以外は、人件費削減のためいったん雇用を切るか、「勤務を要しない期間」として自宅待機とするというようなことが横行している。そのほとんどが非正規の女性労働者である。児童数の少ないこの学校では、大型調理機器の設置がなく、器具類のメンテナンスや洗浄消毒は通常の給食業務時に行っていたのだろう。専門業者による害虫駆除も5連休前という通常業務の隙間で行われた。
 人件費削減と同様に設備改善費も減らされ、ガス管の安全点検・修繕も確実に行われていなかったと思われる。まさに今回の爆発事故は「人間の生命や安全よりも金」という新自由主義の下で、自民党政治と文部科学省による学校給食の合理化、民間委託化、非正規職化が引き起こした殺人事件である。
 また、合理化、民間委託化攻撃と闘わない体制内労働組合執行部の責任も重い。彼らは「現業活性化」「新たな技能職の確立」で、現場組合員に「民間委託会社に負けない働き方」を強制し、一方で委託を認め、委託会社の労働者を分断的に組織する。また「直営堅持」と言いつつ、欠員不補充を臨時・非常勤職員に置き換えることを容認し、雇用上限突破・処遇改善で非正規職化をむしろ推し進めている。今回の「直営だが全員非正規」という現実はここから生み出されたのだ。
 六郷小学校は、食育啓発と地産地消の奨励を目的とした調理コンクール「全国学校給食甲子園」で2010年に北海道・東北ブロック千数百校の代表として全国大会に出場、入賞した学校である。黒石市では小学校10校のうち完全給食(主食、おかず、牛乳)を実施しているのは六郷小を含む3校のみだ。
 小中学生の子どもを持つ女性労働者にとって完全給食実施はとても有り難い。その拡大と充実を願ってレシピ作りや調理工程の研究を夏休み中に「ボランティア」で行っていた非正規の女性労働者である栄養士、調理員の思いを考えると胸が痛む。
 国鉄闘争を先頭とした外注化(民間委託化)阻止・非正規職撤廃の闘いこそ給食労働者と子どもたちの生命と安全を守る。
 正規、非正規、委託という分断を乗り越えてともに闘おう!