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労働組合運動の基礎知識 第49回年次有給休暇について

月刊『労働運動』34頁(0344号18/01)(2018/11/01)


労働組合運動の基礎知識 第49回
年次有給休暇について

■年休を取る人は社会人の常識に反する?

 関西合同労組の新しい分会の会社では「年休を取得するのは社会人としての常識に反する」と言う社長がいるそうだ。組合を公然化してからはそういうことは言わなくなったそうだ。
 年次有給休暇については、労働基準法の規定を知っているしそういう権利があることがわかっていても、有給の申請をして年休を全部消化している職場は少ないのではないだろうか。
 人員がギリギリで、自由に有給休暇を取得できない職場が多い。この有給を全部消化できない人員体制の中で、会社側のインチキな手法として、「保存休暇」という制度が私の職場にはある。有給休暇を全部消化できない場合、残った有給休暇は2年経過すると無効になる。その無効になる有給休暇を50日まで保存休暇として使うことができる制度だ。この保存休暇は、病気で長期に休む場合に使うことができる。先日、同僚が難病にかかり、この保存休暇を使うことになった。こういうことがある場合は「インチキ」とだけは言えない深刻な事態だ。

■労働基準法第39条

 年次有給休暇は、正社員、パート労働者の区別なく一定の条件を満たした全ての労働者に対して、与えなければならない(労働基準法第39条)。正社員の場合は、半年経過すると年10日、1年半で11日、2年半で12日、3年半で14日、4年半で16日、5年半で18日、6・年半以上で20日である。
 週の所定労働時間が4日で週の所定労働時間が30時間未満の労働者の場合は半年で7日、3日は半年で5日…となり、4日の場合は6年半で15日、3日は6年半で11日となる。
 一定の条件とは、出勤率が全労働日の8割以上でなければならない。但し業務上の怪我や、育児休暇・介護休暇を取得して休んでいる期間、会社都合の休業期間は除外され、出勤したこととみなされる。
 1時間単位で年休を取得することも可能であるが、それは5日分に限られる。

■その他年次有給休暇に関するあれこれ

 先に書いたように、年次有給休暇は発生の日から2年間で時効により消滅する(労働基準法第115条)。したがって有給休暇は年間最大で40日までである。
 年次有給休暇の買い取りは、本来の趣旨である「休むこと」を妨げることとなるため、買い取りは法律違反だ。ただし、退職時に結果的に残ってしまった年次有給休暇に対し、残日数に応じた金銭を給付することは差し支えないとされている。私の職場では、退職時には年休を全部使ってしまうので金銭給付ということはしない。
 働き方改革法案の成立により労働基準法が改正され、年10日以上有給休暇の権利がある労働者について、最低でも5日以上は有給休暇を与えることが義務付けられた。2019年4月1日施行である。具体的には、有給休暇の消化日数が5日未満の労働者に対しては、企業側が有給休暇の日を指定して有給休暇を取得させなければならない。詳細については必要があれば後日。

 小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)