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闘う合同一般労組 全国健康保険協会埼玉支部「5年で雇止め」との闘い

月刊『労働運動』34頁(0349号17/01)(2019/04/01)


闘う合同一般労組
全国健康保険協会埼玉支部と「5年で雇止め」攻撃との闘い

全国健康保険協会埼玉支部と「5年で雇止め」攻撃との闘い

(写真 協会けんぽ埼玉支部入口でビラまき)

山本 敏昭 (東京西部ユニオン)

 「5年で雇止め」、これが2008年に国の社会保険庁が民営化されて出来た特殊法人、全国健康保険協会(注)の非正規職員に起きている問題です。
 発端は同協会埼玉支部の非正規職員Aさんが1年半という長期間、グループ長など管理職からパワハラを受け続けたことでした。Aさんはこれに我慢できず、一昨年11月と昨年5月の2度、東京西部ユニオンに相談に来て組合に加入しました。昨年7月から3回の団交が開催され、「東京西部ユニオン」と「さいたまユニオン」が共同で埼玉支部にパワハラへの謝罪を求めてきましたが、埼玉支部はいまだパワハラはなかったと居直り続けています。
 同時に組合が問題としてきたのが、「5年で雇止め」問題です。Aさんは、2014年8月に埼玉支部の「健康保険給付等補助員」として契約職員になりました。以来毎年3月末に、契約が更新されてきましたが、昨年4月の雇用契約書に「契約は更新しません」と記入されていたのです。今年8月には勤続5年になりますが、3月末で「雇止め」されてしまいます。
 この雇止めの根拠となるのが、2014年4月に改定された「契約職員就業規則」です。その35条に「健康保険等給付補助員については、雇用年限を5年とする」条項が追加されました。その1年前の2013年4月には、5年を超えて契約更新された非正規雇用の労働者に「無期転換権」が生じるという、改正労働契約法が施行されていました。同協会は、この無期転換から逃れるように就業規則を改定するという、まさに脱法的なやり方です。Aさんは、この規則改定の4か月後に雇用されたため、この条項が適用されることになります。
 3回の団体交渉を通して、埼玉支部はこの「就業規則改定は無効ではない」と主張しています。国に準じるような国家的・公共的事業体である協会が、国会で決めた法の趣旨を公然と踏みにじる無期転換逃れを行い、5年を目前として雇止め=解雇するなら、社会通念上著しく正義に反します。
 組合は、A組合員の「無期転換されて当然」という当たり前の期待を、権利として認めるように団交で要求してきましたが、同支部は「更新する場合があるのは支部長の評価による」と回答するのみでした。
 埼玉支部には「健康保険等給付補助員」が40人ほどいます。全国にも、2013年4月以降に採用され、5年で雇止めされる「同補助員」が膨大にいるはずです。
 さらに、団交を通して、埼玉支部でのこの就業規則の改定に重大な問題があることが分かりました。就業規則の改定に伴う従業員過半数代表選出に関することです。埼玉支部では協会けんぽ職員労組が過半数組合ではないため、従業員代表は協会埼玉支部が主催する選挙により選出していました。しかしこの契約職員に雇用年限を定めるという、契約職員にとって死活的な就業規則の改定であるにもかかわらず、この改定を行うことを具体的に明示した上で、従業員代表を選出することを行っていませんでした。この改定以前にすでに従業員代表に選出されていたHさんが、従業員代表として意見書を提出していました。
 埼玉支部では契約職員が職員より多数を占めています。「5年で雇止め」に反対する契約職員がいても、「改定反対」の意見表明をして従業員代表に立候補すること、そして従業員代表に選出されること、「改定反対」の意見書を出すという一連の権利が奪われていたのです。
 同支部では、過半数代表者の関与が求められる事項が生じる都度の選出をせず、一度選出された代表者の任期も従業員との間で定めず、極めてずさんなやり方で、契約職員の労働条件を一方的に決めていました。こうして改定された就業規則による、A組合員の5年での雇止めは許されません。
 一昨年東京大学で起きた「無期転換逃れ」の争議では、過半数に達していない労働組合が従業員代表を決めるという労基法上の違法行為があり、就業規則の改定自体が無効とされました。協会埼玉支部の場合もこれと同様の不当な就業規則改定です。
 今年1月23日朝、東京西部ユニオンとさいたまユニオンの仲間は、この「5年で雇止めは許されない!」というビラを、大宮駅近くのビルの前で、埼玉支部の皆さんに配布しました(写真)。
 その直後、埼玉支部はAさんに対して3月末雇止めではなく、きっちり5年間となる「8月までの雇用継続が可能である」と伝えてきました。しかしその8月で雇い止めしようとしていることに変わりはないでしょう。
 このケースと同じ不当な「5年ルール破り」が全国の健康保険協会道府県支部で起きている可能性があり、全国的な取り組みとしたいところです。
 そもそも、「無期転換ルール」を定めた厚生労働省自体が、そのホームページで「有期労働契約において更新年限や更新回数の上限などを設けることが、直ちに法律違反となるものではありません」と明示し、就業規則を定めれば、その後はいくらでも5年直前に雇い止めできるとして、これを推奨しているのです。「無期転換」の法改正など何の意味もなくなります。ここには、すべての労働者を非正規雇用とし、非正規労働者に団結することを許さないという新自由主義が貫かれています。
 すべての契約職員労働者が労働組合に結集して、実力で無期転換権を勝ち取るほかありません。厚労省のお膝元、全国の協会けんぽから、「無期転換やぶり」を打ち破り、契約職員労働者の生きる権利を勝ち取りましょう。

(注)社会保険庁が廃止・解体されて政府管掌健康保険がここに移管された。また企業が健康保険組合を組織していない場合(主に中小企業)等の保険の引受者。

(写真 協会けんぽ埼玉支部入口で配布したビラ)